アルケンの命名法

アルケン (alkene; 不飽和炭化水素; CnH2n)
 アルケンは分子内に炭素-炭素二重結合を持ち、一般式CnH2n (n≧2) で示される。
 これらアルケンの命名もアルカンと同様に IUPAC によって定められた方法により行う。

 (1) 二重結合を含む最も長い炭素鎖 (主鎖) を見つけ、その炭素数に応じてアルカンの -ane を -ene に変える。
 (2) 二重結合が近い方の端から炭素に番号を付ける。もし、両端から同じ距離に二重結合があるときは、初めて分岐が出てくるのが早いほうの端からつける。
 (3) 枝分かれ (置換基) の位置番号を、その置換基に付ける。
 (4) 二重結合のある位置を決める。C1 炭素に二重結合があり、他に二重結合がない場合は名前に二重結合の位置番号を含めない。一つ以上二重結合がある場合は母体の -ene を -diene、-triene、-tetraene に変え、それぞれ位置番号をつける。
 (5) 最後に 『置換基-二重結合の位置-主鎖』 の順に並べ命名する。置換基がある場合は、アルカンと同様にアルファベット順に並べる。

 これらの方法により以下のアルケンについて命名する。

   

 

 アルケンには慣用名があり IUPAC 命名法に用いることができる。
IUPAC 命名法 慣用名
エテン (ethene) エチレン (ethylene)
プロペン (propene) プロピレン (propylene)
2-メチルプロペン (2-methylpropene) イソブチレン (isobutylene)
2-メチル-1,3-ブタジエン (2-methyl-1,3-butadiene) イソプレン (isoprene)
1,3-ペンタジエン (1,3-pentadiene) ピペリレン (piperylene)

 ・シス-トランス異性体
  2-butene のような二置換アルケンでは、炭素-炭素二重結合の周りでは回転ができないため置換基の付き方によっては二つの異性体が生じる。これらの異性体をシス-トランス異性体と呼ぶ。置換基が二重結合を挟んで同じ側にあるものをシス体、反対側にあるものをトランス体という。
 

 ・E,Z 命名法
  シス-トランスは二置換アルケンに対してだけ名付けることができる。三置換、四置換アルケンに対してはE,Z 命名法を用いて異性体を表す。命名の仕方は Cahn-Ingold-Prelog 則に従って行う。

 (1) 二重結合の二つの炭素を別々に考え、それぞれの炭素に付いている置換基の始めの原子の順位を決める。原子番号が大きい方が高い順位になる。同じ順位のものが同じ側にあるものを Z、反対側にあるものを E と表す。
 
 (2) (1) では区別ができない場合は、置換基の 2 番目、3 番目・・・・に付いている原子と区別ができるまで探す。


 (3) 二重、三重結合がある場合は、同じ数の単結合原子と等価であるとする。